DIYや家具の組み立て、ちょっとした修理など、私たちの生活のあらゆる場面で活躍している「ネジ」。とても身近な存在ですが、いざ使おうとすると「どのネジを選べばいいの?」「うまく締められない…」なんて経験はありませんか?
実は、ネジにはたくさんの種類があって、それぞれに特徴や適した使い方があるんです。ネジの世界は、知れば知るほど奥が深く、そして面白いんですよ!
この記事では、そんなネジの基本から、種類、選び方、正しい使い方、さらには困ったときのトラブルシューティングまで、ネジに関するあらゆる情報を網羅的に、そして分かりやすく解説していきます。特定の商品をおすすめするのではなく、純粋にネジの知識を深めるための「お役立ち情報」だけを詰め込みました。この記事を読み終わる頃には、あなたも立派な「ネジ博士」になっているかもしれませんよ!
ネジの基本の「き」!まずはここから押さえよう
まずは基本中の基本、ネジっていったい何なのでしょうか?そして、どんな仕組みでモノとモノをくっつけているのでしょうか?各部分の名称と合わせて、わかりやすく解説します。
そもそもネジって何?その役割とは
ネジ(螺子、捩子)とは、円筒や円錐の側面に「らせん状の溝」を設けた部品のことです。このらせん状の溝、つまり「ネジ山」が、ネジの最大の特徴です。
ネジの主な役割は、なんといっても「締結(ていけつ)」です。締結とは、複数の部品を一つにまとめ、固定すること。例えば、家具の板と板を固定したり、機械の部品を取り付けたりするのに使われます。接着剤のように一度つけたら離せないわけではなく、ドライバーなどの工具を使えば、繰り返し締めたり緩めたりできるのが大きなメリットです。これにより、メンテナンスや分解、組み立てが容易になります。
また、締結以外にも、ジャッキのように重いものを持ち上げる「力を伝達する」役割や、マイクロメーターのように精密な「位置決めをする」役割など、実はさまざまな場面でネジの原理が応用されています。
これだけは覚えたい!ネジ各部の名称
ネジと一口に言っても、それぞれの部分にちゃんと名前があります。これを知っておくと、ネジを選ぶときや人と話すときにとても便利ですよ。ここでは、代表的な部分の名称をご紹介します。
| 名称 | 説明 |
| 頭部(とうぶ) | ネジの一番上の部分で、ドライバーなどを当てて回すところです。丸い形や平らな形など、様々な形状があります。 |
| 首(くび) | 頭部のすぐ下の部分です。ネジの種類によっては、この部分にネジ山が切られていないこともあります。 |
| 呼び径(よびけい) | ネジの太さを表す直径のことです。一般的に、ネジ部の外径(一番太い部分の直径)を指します。「M6」と書かれていれば、呼び径が6mmのネジということになります。 |
| ネジ部(ねじぶ) | らせん状の溝が切られている部分全体を指します。 |
| 山(やま) | ネジ部のギザギザした、出っ張っている部分です。 |
| 谷(たに) | ネジ部のギザギザした、へこんでいる部分です。 |
| ピッチ | 隣り合う山と山、または谷と谷の間の距離のことです。このピッチが狭い(細かい)ほど、ゆっくりと締まっていき、緩みにくい傾向があります。 |
| リード | ネジを1回転させたときに、軸方向に進む距離のことです。一般的な1条ネジでは「ピッチ=リード」となります。 |
| 首下長さ(くびしたながさ) | 頭部の下面からネジの先端までの長さのことです。ネジの長さを表すのに一般的に使われます。(ただし、頭部が平らな「皿ネジ」の場合は、頭部を含めた全長で長さを表します) |
| 先端(せんたん) | ネジの先っぽの部分です。木ネジのように尖っているものや、切断されたままの形状のものなどがあります。 |
ネジはなぜ締まる?魔法のような「らせんの原理」
ネジをクルクル回すだけで、なぜあんなに強くモノを固定できるのでしょうか?その秘密は「らせんの原理」にあります。
少し難しい話に聞こえるかもしれませんが、実はとてもシンプル。「らせん」は、「斜面」を応用したものです。 imagineしてみてください。急な坂道をまっすぐ登るのは大変ですが、坂道をぐるぐると回りながら登れば、より小さな力で高いところまでたどり着けますよね。
ネジもこれと同じ原理です。ネジを回すという「回転力」は、らせん(斜面)の働きによって、ネジを前に進ませる「軸方向の力」に変換されます。そして、小さな回転力で、非常に大きな「締め付ける力(軸力)」を生み出すことができるのです。
さらに、ネジ山と相手の材料との間に働く「摩擦力」が、一度締めたネジが勝手に緩んでしまうのを防いでくれます。この「らせんの原理」と「摩擦力」の組み合わせが、ネジの強力な締結力を生み出しているのです。まさに、先人の知恵が詰まった魔法のような仕組みですよね!
知らないと損!多種多様なネジの種類
ホームセンターのネジ売り場に行くと、その種類の多さに圧倒されてしまいますよね。頭の形、溝の形、材質など、ネジは様々な要素で分類されます。ここでは、代表的なネジの種類とその特徴を詳しく見ていきましょう。これを読めば、用途に合ったネジを自分で選べるようになりますよ!
頭の形で選ぶ!代表的なネジ頭部の種類
ネジの頭部は、見た目だけでなく、機能性にも大きく関わってきます。どんな場所で、どのように使いたいかによって最適な頭の形は変わります。
- なべ頭
おそらく最もポピュラーな形状です。お鍋をひっくり返したような丸みを帯びた形で、頭部の高さがあるためドライバーをかけやすく、しっかりと締め付けることができます。迷ったらコレ、というくらい汎用性が高いです。 - 皿頭(さらあたま)
頭部が平らで、円錐形をしています。締め付けたときに、部材の表面から頭が出っ張らないようにしたい(面一にしたい)場合に使用します。そのためには、部材側に「皿もみ」という円錐形の穴をあける加工が必要です。見た目をスッキリさせたい家具などに多く使われます。 - トラス頭
なべ頭よりも直径が大きく、高さが低い、丸くて平べったい形をしています。頭部の面積が広いため、部材を押さえる力が強く、薄い板や柔らかい素材を固定するのに向いています。見た目も装飾的で、アクセントとして使われることもあります。 - バインド頭
なべ頭とトラス頭の中間のような形状で、トラス頭よりも少し背が高く、頭部のフチに丸みがあります。トラス頭同様、座面が広いため押さえる力が強く、電化製品の基板固定などにも使われます。 - 丸頭(まるあたま)
頭部が半球状になっているネジです。装飾的な目的で使われることが多く、クラシックな家具や雑貨などで見かけることがあります。 - 六角頭(ろっかくあたま)
頭部が六角形になっており、スパナやレンチを使って締め付けます。非常に大きな力で締め付けることができるため、機械や建築物など、高い強度が必要な場所で使われる「ボルト」に多い形状です。 - キャップ(六角穴付きボルト)
円筒形の頭部に六角形の穴が開いています。六角レンチを使って締め付けます。見た目がスッキリしており、狭い場所でも作業がしやすいのが特徴です。機械の内部や自転車、家具の組み立てなど、幅広い用途で使われています。
使う工具が変わる!溝(リセス)の形の種類
頭部にある、ドライバーの先端を差し込む溝のことを「リセス」と呼びます。この形によって、使う工具や締め付けやすさが変わってきます。
- プラス(十字穴)
日本で最も普及しているタイプです。十字の形をしており、ドライバーが中心に合いやすく、力を伝えやすいのが特徴です。フィリップス(Phillips)型と、それを改良したJIS規格のものが主流です。 - マイナス(すりわり)
一本の直線の溝です。古くからあるタイプで、構造がシンプルなのが利点ですが、ドライバーが溝から外れやすく(カムアウトしやすい)、大きな力で締めにくいという側面もあります。装飾目的や、古い機器の修理などで見られます。 - 六角穴(ヘックスローブ)
キャップボルトの頭部にある六角形の穴です。六角レンチを差し込んで回します。プラスやマイナスに比べて、ネジと工具がしっかりかみ合うため、非常に大きな力で締め付けることができ、ネジ穴をなめにくい(潰しにくい)のが大きなメリットです。 - トルクス(ヘックスロビューラ)
星形の穴が特徴です。ヘックスローブよりもさらに多くの点で力を伝えるため、カムアウトが起こりにくく、より効率的に力を伝達できます。精密機器や自動車部品、最近ではDIY用の工具でも増えてきています。 - 四角穴(スクエア)
四角形の穴が開いているタイプです。カナダで発明され、北米のウッドデッキなどでよく使われます。プラス穴よりもカムアウトしにくく、安定した締め付けが可能です。
相手の素材で決める!ネジ山の種類
ネジの心臓部である「ネジ山」。この形状によって、金属に使うのか、木に使うのかなど、主な用途が決まります。
- メートルネジ
ISO(国際標準化機構)で規格化された、世界で最も広く使われているネジです。ネジ山の角度が60度で、ピッチや直径はミリメートル(mm)単位で決められています。さらに、ピッチの幅によって「並目(なみめ)」と「細目(ほそめ)」に分けられます。- 並目ネジ:一般的なピッチのネジで、最も広く流通しています。特別な指定がなければ、メートルネジと言えば並目ネジを指します。
- 細目ネジ:並目よりもピッチが細かいネジです。ピッチが細かい分、緩みにくく、微調整がしやすいという特徴があります。また、同じ呼び径なら谷の径が太くなるため、強度も若干高くなります。振動が多い場所や、精密な調整が必要な場所で使われます。
- インチネジ
その名の通り、インチ(inch)を基準にしたネジです。主にアメリカやイギリスで使われてきましたが、現在では航空機など一部の分野を除き、メートルネジへの移行が進んでいます。代表的なものに「ユニファイネジ」や「ウィットウォースネジ」があります。海外製品の修理などでは、インチネジが必要になることがあります。 - 木ネジ(もくねじ)
木材に直接ねじ込むためのネジです。先端が尖っており、ネジ山の間隔(ピッチ)が広く、山も高くなっています。これにより、木材の繊維にしっかりと食い込み、強い保持力を発揮します。基本的には、締結する部材側にだけネジ山があり、頭部側にはネジ山がない「半ネジ」タイプが多いです。 - タッピンねじ
金属の薄板やプラスチックなど、木材以外の素材に「めねじ(雌ねじ)」が切られていない場合に、自らめねじを形成しながらねじ込まれていくネジです。先端の形状やネジ山の形によって、様々な種類があります。下穴を開けて使うのが基本です。家電製品や自動車の内装など、非常に多くの場所で使われています。 - ドリルねじ(ピアスビス、テクスねじ)
先端がドリルの刃のようになっており、下穴を開ける作業とねじ込みを一度に行える優れものです。主に薄い鋼板などに使われ、作業効率を大幅に向上させることができます。
性能を左右する!材質の種類
ネジが作られる材質は、強度、錆びにくさ、重さ、価格などに大きく影響します。使用する環境や目的に合わせて、最適な材質を選びましょう。
- 鉄(鋼)
最も一般的で、安価な材質です。炭素の含有量によって様々な種類があり、強度も調整できます。ただし、最大の弱点は「錆びやすい」こと。そのため、通常は後述する「メッキ」などの表面処理を施して使われます。 - ステンレス
「ステン(Stain)」「レス(Less)」、つまり「錆びにくい」鋼です。鉄にクロムやニッケルを混ぜることで、表面に非常に薄い「不動態皮膜」を形成し、錆の発生を防ぎます。鉄より高価ですが、錆びにくいため、キッチンや浴室などの水回り、屋外での使用に最適です。代表的なものに「SUS304」(家庭用品でよく見る18-8ステンレス)や、SUS304よりさらに耐食性を高めた「SUS316」などがあります。 - 真鍮(しんちゅう)
銅と亜鉛の合金で、美しい金色の光沢が特徴です。加工しやすく、電気伝導性も良いため、装飾用のネジや電気部品の端子などに使われます。錆びにくいですが、年月とともに味わい深い色に変化していくのも魅力の一つです。 - アルミニウム
非常に軽量で、加工性が良く、錆びにくいのが特徴です。ただし、強度は鉄やステンレスに劣るため、大きな力がかからない場所で、軽量化を目的として使われます。 - チタン
「軽い」「強い」「錆びない」という三拍子揃った高性能な金属です。海水にも強く、金属アレルギーも起こしにくいという利点もあります。しかし、非常に高価で加工も難しいため、航空宇宙分野や医療分野(インプラントなど)、高性能なスポーツ用品(自転車のパーツなど)といった特殊な用途で使われます。 - プラスチック
金属ではないため、錆びることはありません。軽量で、電気を通さない「絶縁性」があるのが最大の特徴です。また、薬品に強い種類もあります。強度は金属に劣りますが、絶縁が必要な電気製品の内部や、軽量化したい模型などで活躍します。
錆や見た目を決める!表面処理の種類
錆びやすい鉄製のネジも、表面に薄い金属の膜をコーティングする「メッキ」などの表面処理を施すことで、防錆性能を向上させることができます。見た目の色合いも変わるので、デザイン的な要素もあります。
- ユニクロメッキ
亜鉛メッキの一種で、メッキ後にクロメート処理を施したものです。美しい銀色の光沢があり、安価で防錆性もそこそこあるため、屋内用のネジとして非常に広く使われています。 - クロメートメッキ
ユニクロメッキと同様に亜鉛メッキの一種ですが、こちらは黄色っぽい(黄金色)色合いが特徴です。ユニクロメッキよりも耐食性が高いとされています。 - ニッケルメッキ
銀白色の美しい光沢があり、装飾目的でよく使われます。耐食性も良好ですが、他のメッキに比べてやや高価です。 - クロームメッキ
ニッケルメッキの上にさらにクロムメッキを施したもので、非常に硬く、耐摩耗性、耐食性に優れています。青みがかった美しい銀白色で、自動車のエンブレムや水道の蛇口などにも使われる高級なメッキです。 - 亜鉛めっき(溶融亜鉛めっき)
高温で溶かした亜鉛の槽に鋼材を浸してメッキする方法です。非常に厚いメッキ層が形成されるため、極めて高い防錆性能を発揮します。屋外のガードレールや標識の支柱など、過酷な環境で使われる部材に施されます。表面はゴツゴツとした見た目になります。 - 塗装(コーティング)
塗料を塗ることで防錆性やデザイン性を高めます。ウッドデッキ用のネジなどでは、木の色に合わせた茶色や黒色のコーティングが施されているものがあります。
もう迷わない!最適なネジの選び方
たくさんの種類があることはわかりましたが、では実際にDIYや修理をするとき、どうやって最適な一本を選べばいいのでしょうか?ここでは、実践的なネジの選び方のポイントを解説します。
STEP1: 何を何に固定するかで選ぶ
まず最初に考えるべきは、「締結する素材」です。素材によって、適したネジの種類は大きく異なります。
- 木材同士を固定する場合
迷わず「木ネジ」を選びましょう。木ネジの粗いピッチが、木材の繊維にしっかりと食い込みます。DIYで棚を作ったり、木製の家具を組み立てたりするなら、木ネジが基本です。 - 金属の薄板やプラスチックに固定する場合
「タッピンねじ」が適しています。相手の素材にめねじを切りながら入っていくので、下穴さえ開ければ固定できます。金属の薄板に固定する場合は、先端がドリル状になった「ドリルねじ」を使うと、下穴開けの手間が省けて非常に効率的です。 - すでに「めねじ(雌ねじ)」が切ってある場所に固定する場合
この場合は「小ねじ」や「ボルト」といった、メートルネジやインチネジを使います。機械の部品や、組み立て家具などで、ナットと組み合わせて使う場合も同様です。相手のめねじの規格(M6、M8など)に合ったものを選ぶ必要があります。
STEP2: どこで使うか(使用環境)で選ぶ
次に、そのネジをどこで使うのかを考えます。特に「錆」への対策は重要です。
- 屋内(リビング、寝室など)で使う場合
雨風にさらされることがないので、最も一般的な鉄製のユニクロメッキのネジで十分な場合が多いです。コストも安く、入手しやすいのがメリットです。 - 水回り(キッチン、洗面所、トイレ、浴室)で使う場合
湿気が多く、水がかかる可能性のある場所では、鉄製のネジはすぐに錆びてしまいます。錆は見た目が悪いだけでなく、強度を低下させ、取り外せなくなる原因にもなります。このような場所では、「ステンレス製」のネジを使うのがおすすめです。 - 屋外(ウッドデッキ、フェンス、物置など)で使う場合
常に雨風や紫外線にさらされる屋外は、ネジにとって最も過酷な環境です。ここでも「ステンレス製」のネジが最適です。特に、沿岸部など塩害の可能性がある地域では、より耐食性の高い「SUS316」や、専用の防錆コーティングが施されたネジを選ぶと、より長持ちします。コストはかかりますが、後々のメンテナンスの手間を考えると、初期投資を惜しまない方が良い結果につながることが多いです。
STEP3: 必要な強さ(太さと長さ)で選ぶ
素材と環境が決まったら、最後にネジのサイズ、つまり「太さ(呼び径)」と「長さ」を決めます。
太さ(呼び径)の選び方
基本的には、太いネジほどせん断強度(ネジが切断される力への強さ)や引張強度(引き抜かれる力への強さ)が高くなります。重いものを支える場所や、大きな力がかかる構造部分には、太いネジを使う必要があります。逆に、小さな部品の固定や、あまり力がかからない場所では、細いネジで十分です。見た目のバランスも考慮して選びましょう。部材に対してネジが太すぎると、見た目が悪くなるだけでなく、木材などの場合は割れの原因にもなります。
長さの選び方
長さは、固定する強度に直結する重要な要素です。
木材に木ネジを打ち込む場合、一般的に「固定する側の板の厚さの2倍~3倍」の長さのネジがねじ込まれている状態が理想的とされます。例えば、厚さ20mmの板を、柱に固定したい場合、ネジが柱に40mm~60mm程度入るように、全長60mm~80mm程度のネジを選ぶ、といった具合です。ただし、長すぎると反対側に突き抜けてしまうので注意が必要です。
ボルトとナットで締結する場合は、ボルトの先端がナットからネジ山2~3個分くらい突き出る長さが適切とされています。
これだけは知っておきたい!ネジのサイズの読み方
ネジのパッケージには、「M6×20」や「トラス 4×15」のような表記があります。この意味が分かれば、もうネジ選びで困ることはありません。
- 「M」の意味
「M」は、そのネジが「メートルネジ」であることを示しています。世界標準の規格なので、日本で手に入るネジのほとんどにこのMがついています。 - 最初の数字(例:M6の「6」)
これはネジの「呼び径」、つまりネジ部の太さ(直径)をミリメートル単位で表しています。「M6」なら、太さが約6mmのメートルネジということです。 - 「×」の後の数字(例:M6×20の「20」)
これはネジの「首下長さ」をミリメートル単位で表しています。「M6×20」なら、頭の下から先端までの長さが20mmということです。(※ただし、皿ネジや丸皿ネジの場合は、頭のてっぺんから先端までの「全長」を表すのが一般的です)
木ネジやタッピンねじの場合は、「M」がつかず、「4×15」のように表記されることが多いですが、意味は同じで「呼び径4mm、長さ15mm」となります。
プロ直伝!ネジの正しい使い方とコツ
せっかく良いネジを選んでも、使い方が間違っていると、本来の性能を発揮できないばかりか、部材やネジ自体を傷めてしまうことも。ここでは、ネジを「正しく、きれいに、しっかりと」締めるためのコツをご紹介します。
一番大事!サイズに合った工具を準備する
ネジを締める上で、最も重要なのが「ネジの溝(リセス)にぴったり合ったドライバーを使うこと」です。当たり前のようですが、意外とできていない人が多いポイントです。
プラスドライバーには、実は「No.0」「No.1」「No.2」「No.3」といったサイズがあります(先端の大きさで決まります)。一般的に、ネジの呼び径が2.6mm以下ならNo.1、3mm~5mmならNo.2、6mm以上ならNo.3が適合します。家庭で最もよく使うのはNo.2のドライバーです。
サイズの合わないドライバーを使うと、どうなるでしょうか?
大きすぎるドライバーは、そもそも溝に入りません。逆に、小さすぎるドライバーを使うと、溝とドライバーの間に隙間ができてしまい、力がうまく伝わりません。その結果、「カムアウト(ドライバーが溝から浮き上がって外れる現象)」が起こりやすくなり、ネジの溝を潰してしまう「ネジ穴なめ」の最大の原因になります。
一度なめてしまったネジを外すのは非常に大変です。必ず、ネジのサイズに合った、精度の良いドライバーを選んでください。少し良いドライバーを使うだけで、作業性は劇的に向上しますよ。
仕上がりが変わる!下穴の重要性
特に木材に木ネジを打ち込む場合、「下穴」を開ける一手間が、仕上がりの美しさと強度を大きく左右します。
なぜ下穴が必要なの?
- 木材の割れ防止
いきなり太いネジをねじ込むと、木材の繊維が押し広げられ、特に端の方では簡単に「パキッ」と割れてしまいます。下穴を開けておくことで、ネジがスムーズに入っていくための道ができ、木割れを防ぐことができます。 - 正確な位置決め
下穴なしでネジを締め始めると、木目に沿ってネジが斜めに入っていってしまうことがあります。正確な位置に下穴を開けておけば、ネジをまっすぐに、狙った場所に打ち込めます。 - 締め付け力の向上
意外に思うかもしれませんが、適切な下穴は、結果的にネジの保持力を高めます。下穴がないと、ネジは自身の力で木材をこじ開けながら進むため、周囲の繊維を過度に破壊してしまい、かえって保持力が弱まることがあるのです。
下穴の適切なサイズは?
下穴の太さは、使用する木ネジの呼び径の70%~90%程度が目安です。例えば、呼び径4mmの木ネジを使うなら、直径2.8mm~3.6mmのドリルで下穴を開けます。一般的には、ネジの谷の径と同じくらいの太さが理想とされています。硬い木材(ハードウッド)の場合は少し太めに、柔らかい木材(ソフトウッド)の場合は少し細めにするとうまくいきます。
基本の動作!まっすぐに締めるコツ
ネジは、部材に対して垂直に、まっすぐ入っている状態が最も強度を発揮します。斜めに入ったネジは、見た目が悪いだけでなく、十分な締結力が得られません。
- ネジを立てる
まず、開けた下穴にネジの先端を差し込み、利き手ではない方の指でネジを支え、部材に対して垂直に立てます。 - 最初は手で回す
工具を使う前に、指でネジを2~3回転ほど回して、ネジ山を食い込ませます。これにより、ネジが安定し、その後の作業が楽になります。 - ドライバーで締める
利き手でドライバーを持ち、ネジの頭にしっかりと押し付けます。このとき、「押す力:7、回す力:3」くらいの力加減を意識するのがコツです。回すことばかりに意識がいくと、カムアウトしやすくなります。 - 体全体で
ドライバーの軸とネジが一直線になるように、真上から覗き込むような姿勢で作業します。手先だけで回そうとせず、肘を固定し、体全体を使ってゆっくりと回していくと、ブレずにまっすぐ締められます。
締めすぎはNG!「トルク」を意識しよう
「しっかり固定したいから」と、力まかせにネジを締めすぎていませんか?実は、ネジの締めすぎ(オーバートルク)は、緩んでいるのと同じくらい、あるいはそれ以上に問題を引き起こす可能性があります。
締めすぎるとどうなる?
- ネジの破損
ネジの強度限界を超えると、首の部分でねじ切れたり、頭が飛んでしまったりします。 - めねじの破損
相手側のめねじ(特にアルミやプラスチックなどの柔らかい素材)が壊れてしまい、ネジが空回りする「ねじバカ」の状態になります。 - 部材の破損
締め付ける力が強すぎると、部材自体が変形したり、陥没したり、割れたりします。
では、どのくらいの力で締めればいいのでしょうか?工業製品の組み立てでは「トルクレンチ」という専用の工具で締め付けトルク(回す力)を管理しますが、DIYでは感覚に頼ることがほとんどです。
一つの目安は、ネジの頭が部材の表面にちょうど接して、キュッと抵抗が強くなったところから、さらに少しだけ(例えば1/8回転ほど)増し締めする程度です。電動ドライバーを使う場合は、トルク調整機能(クラッチ機能)を使い、最初は弱い設定から試していき、適切な締め付け力を見つけるのが良い方法です。
困ったときの駆け込み寺!ネジのトラブル解決法
どんなに気をつけていても、ネジのトラブルは起こってしまうもの。でも、大丈夫!代表的なトラブルの原因と、その対処法を知っていれば、慌てずに対処できます。
【トラブル1】ネジ穴がなめて(潰れて)しまった!
ドライバーをかけてもツルツルと滑ってしまい、ネジが回せない…。「ネジ穴をなめる」は、最も頻繁に起こるトラブルの一つです。諦める前に、以下の方法を試してみてください。
対処法
- 幅の広い輪ゴムを挟む
なめてしまったネジ穴の上に、幅の広い輪ゴムを1枚乗せ、その上からドライバーを強く押し付けながら、ゆっくりと回します。ゴムの摩擦力が、ドライバーとネジ穴の隙間を埋めて、回転力を伝えてくれることがあります。 - ネジすべり止め液を使う
硬い粒子が入った液体状の製品で、ネジ穴に一滴垂らすと、摩擦力を大幅にアップさせてくれます。輪ゴムよりも効果が高い場合が多く、一つ持っておくと安心です。 - ショックドライバー(インパクトドライバー)を使う
ハンマーで叩くと、その衝撃で先端が回転する特殊なドライバーです。ネジに下方向への強い衝撃と回転力を同時に与えるため、固着したネジやなめたネジを緩めるのに効果的です。 - ネジザウルスなどの専用工具を使う
なめたネジの頭をガッチリと掴んで回すことができる、特殊なペンチです。ネジの頭が少しでも出っ張っていれば、この工具で掴んで回すことができます。 - エキストラクター(逆タップ)を使う
なめたネジの中心にドリルで下穴を開け、そこに「逆ネジ」が切られたエキストラクターをねじ込んでいくことで、ネジを緩める方向に回して抜き取る専門工具です。最終手段とも言える方法です。
【トラブル2】ネジが錆びて固着し、回らない!
屋外や水回りで長年使われたネジは、錆によって部材と一体化してしまい、ビクともしないことがあります。力任せに回そうとすると、ネジの頭をねじ切ってしまう危険性も。
対処法
- 潤滑浸透スプレーを吹き付ける
まず試したいのがコレ。ネジの隙間に向かって、潤滑浸透スプレーをたっぷりと吹き付けます。スプレーの成分が錆の隙間に浸透し、潤滑作用でネジを回りやすくしてくれます。吹き付けてから、数分から数十分放置すると、より効果的です。 - ドライバーで叩く
ドライバーをネジの溝に当て、上からハンマーでコンコンと軽く数回叩きます。この振動で、錆による固着が剥がれることがあります。叩きすぎるとネジや部材を傷めるので、力加減には注意してください。(ショックドライバーを使うのが最も効果的です) - ネジを加熱する
熱膨張を利用する方法です。ネジの周辺をヒートガンやトーチランプなどで加熱すると、金属が膨張し、冷えるときに収縮することで、錆の固着に隙間が生まれます。火を使うので、周囲に燃えやすいものがないか、部材が熱に耐えられるかなどを十分に確認し、火傷にも細心の注意を払って行う必要があります。
【トラブル3】ネジが途中で折れてしまった!
締め付けすぎや、金属疲労によって、ネジが途中でポッキリと折れてしまうことがあります。ネジの頭部がなく、ネジ部だけが部材に残ってしまった状態は、最も厄介なトラブルの一つです。
対処法
- プライヤーで掴んで回す
折れたネジの先端が少しでも部材から突き出ている場合は、ロッキングプライヤー(バイスグリップ)などで先端を強力に掴み、ゆっくりと回して抜き取れる可能性があります。 - 中心に穴を開けてエキストラクターを使う
折れたネジの断面の中心に、慎重にポンチで印をつけ、ドリルで下穴を開けます。そこにエキストラクター(逆タップ)をねじ込んで抜き取る方法です。なめたネジの場合と同様ですが、折れたネジの断面は硬くなっていることが多く、穴あけ作業の難易度は高くなります。 - 一回り大きな穴を開けて埋める
どうしても取れない場合の最終手段です。残ったネジごと、一回り大きなドリルで穴を開けてしまい、ネジを取り除きます。その後、開いた穴を木ダボやパテで埋めたり、より大きな径のネジを使ったりして補修します。
【トラブル4】すぐにネジが緩んでしまう!
特に振動が多い場所では、しっかりと締めたはずのネジが、いつの間にか緩んでしまうことがあります。緩みはガタツキや異音の原因となり、放置すると重大な事故につながる可能性もあります。
対処法
- ワッシャー(座金)を使う
ワッシャーは、ネジの緩み止めや、部材への陥没を防ぐために使われる薄い円盤状の部品です。- 平ワッシャー:ネジの頭やナットの下に入れ、座面を広くすることで、部材への負担を減らし、安定した締結を助けます。
- ばねワッシャー(スプリングワッシャー):C字状に切れ目が入ったワッシャーで、その反発力(ばねの力)でネジに常にテンションをかけ、振動による緩みを防ぎます。
- 歯付き座金:内側や外側に歯が付いており、この歯が部材に食い込むことで、緩みを物理的に防止します。
- 緩み止めナットを使う
ナイロンが埋め込まれた「ナイロンナット」や、フチにツバが付いた「フランジナット」など、それ自体に緩み止め機能を持ったナットを使うのも効果的です。 - ネジロック剤(嫌気性接着剤)を使う
ネジ山に塗布して締め付けると、空気が遮断されることで硬化し、ネジを強力に固定する化学的な緩み止めです。強度によって「低強度」「中強度」「高強度」などの種類があり、中強度のものなら工具を使えば取り外すことができます。絶対に外さない場所には高強度のものを、というように使い分けます。 - 細目ネジを使う
前述の通り、並目ネジよりもピッチが細かい細目ネジは、ネジ山の接触面積が大きく、リード角も小さいため、原理的に緩みにくいという特性があります。
知っていると面白い!ネジの豆知識
最後に、知っているとちょっと誰かに話したくなるような、ネジに関する面白い豆知識をいくつかご紹介します。
なぜほとんどのネジは「右ネジ」なの?
私たちの周りにあるネジのほとんどは、時計回りに回すと締まり、反時計回りに回すと緩む「右ネジ」です。これはなぜでしょうか?
これには諸説ありますが、最も有力なのは「多くの人が右利きであるため」という説です。右利きの人がドライバーを持って、力を入れやすい回し方が時計回り(締める方向)だから、というわけです。単純ですが、理にかなっていますよね。
では、「左ネジ」は存在しないのでしょうか?もちろん、存在します。反時計回りに回すと締まる左ネジは、特殊な場所で使われています。例えば、回転する機械で、その回転方向によってネジが緩んでしまうのを防ぎたい場所です。具体的には、自転車の左側のペダルや、扇風機の羽根を固定するナットなどが左ネジになっています。もしこれらの部品が右ネジだと、使っているうちに回転の力で緩んでしまい、危険ですよね。そういった場所では、あえて左ネジが採用されているのです。
「ネジ」と「ボルト」と「ビス」の違いは?
「ネジ」「ボルト」「ビス」、これらの言葉を何となく使い分けている方も多いのではないでしょうか。実は、これらの呼び方には、JIS規格などで明確に定義されているわけではなく、業界や文脈によって使い分けられる、少し曖昧な側面があります。
しかし、一般的には以下のような傾向で使い分けられることが多いです。
- ネジ(小ねじ)
比較的小さく、ドライバーで締めるもの。先端が平らで、主にめねじが切られた箇所や、ナットと組み合わせて使われるものを指すことが多いです。「Screw」の訳語として、全体の総称としても使われます。 - ボルト
比較的大きく、主に六角頭でスパナやレンチで締めるもの。ナットと組み合わせて使うことが前提のものを指すことが多いです。建築や機械など、高い強度が必要な締結に使われます。 - ビス
フランス語の「Vis」が語源で、英語の「Screw」とほぼ同義です。日本では特に、木ネジやタッピンねじのように、相手の素材に自らねじ山を形成しながら入っていくものを「ビス」と呼ぶ傾向があります。「コーススレッド」や「ドリルビス」などがその代表例です。
まとめると、「ドライバーで締める小さいのが小ねじ」「レンチで締める大きいのがボルト」「下穴だけで入っていくのがビス」といったイメージで捉えておくと、大きな間違いはないかもしれません。
ちょっとマニアック?ピッチとリードの違い
ネジの基本で「ピッチ」と「リード」という言葉が出てきました。一般的なネジ(1条ネジ)では「ピッチ=リード」なので、あまり意識する必要はありません。しかし、世の中には特殊な「多条ネジ」というものも存在します。
ピッチとは、あくまで「隣り合うネジ山とネジ山の間隔」です。これは、ネジが1条でも2条でも変わりません。
リードとは、「ネジを1回転させたときに進む距離」です。
一般的なネジは、らせんが1本だけ入っている「1条ネジ」なので、1回転させると、隣の山まで、つまり1ピッチ分進みます。だから「ピッチ=リード」なのです。
しかし、「多条ネジ」、例えば「2条ネジ」は、2本のらせんが平行して入っています。この場合、1回転させると、らせんが2本分進むので、「リード=ピッチ×2」となります。多条ネジは、少ない回転数で素早くネジを移動させたい場所、例えば瓶のフタや、万力(まんりき)の送り機構などに使われています。
まとめ:ネジを知れば、世界が広がる!
いやー、ネジの世界、いかがでしたか?たかがネジ、されどネジ。小さな一本のネジの中に、たくさんの種類と、科学的な原理、そして先人たちの知恵が詰まっていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
頭の形、溝の形、材質、表面処理…。それぞれの特徴を理解すれば、「この場所には、見た目をスッキリさせたいから皿頭のステンレスネジを使おう」「ここは力がかかるから、少し太めの六角ボルトでがっちり固定しよう」というように、自分で考えて最適な一本を選べるようになります。
正しい工具で、正しい使い方をマスターすれば、ネジ穴をなめてしまったり、木を割ってしまったりする失敗も格段に減るはずです。そして、もしトラブルが起きても、この記事で紹介した対処法を知っていれば、きっと乗り越えられます。
ネジを制する者は、DIYを制す!と言っても過言ではありません。この記事が、あなたの「ものづくりライフ」や、日々のちょっとした修理の場面で、少しでもお役に立てれば幸いです。さあ、あなたもネジと仲良くなって、新しい世界の扉を開けてみませんか?

