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剪定用具の基本|庭木の手入れが変わる選び方・使い方

はじめに:剪定はなぜ必要?庭木と仲良く付き合う第一歩

お庭の木々、なんだか伸び放題になっていませんか?「そろそろ切らなきゃな…」と思いつつも、何から手をつけていいか分からず、後回しにしてしまうことってありますよね。でも、剪定は単に木の見た目を整えるだけじゃない、とっても大切な作業なんです。

剪定には、たくさんの目的があります。例えば、混み合った枝を間引くことで風通しや日当たりを良くし、病気や害虫の発生を防ぐことができます。また、木の成長をコントロールして、花や実がつきやすくなるように促したり、大きくなりすぎてお隣さんにご迷惑をかけたり、電線に引っかかったりするのを防ぐという役割も。つまり、剪定は庭木たちが健やかに育ち、私たちが安全で快適に暮らすために欠かせない、木とのコミュニケーションなんです。

そして、その大切なコミュニケーションを助けてくれるのが「剪定用具」。なんとなく家にあるハサミで…なんて思っていると、うまく切れずに木を傷つけてしまったり、自分の手が痛くなってしまったり、思わぬケガにつながることも。逆に、自分に合った適切な道具を選ぶことで、作業は驚くほどスムーズに、そして楽しくなります。

この記事では、特定の商品をおすすめするのではなく、「剪定用具にはどんな種類があるの?」「自分にはどれが合っているの?」「どうやって使って、どうお手入れすればいいの?」といった、剪定用具に関する基本的な知識を、初心者の方にも分かりやすく、そして詳しく解説していきます。この記事を読めば、あなたもお庭の木々と、もっと上手に付き合えるようになるはずです。さあ、一緒に剪定用具の世界をのぞいてみましょう!

  1. はじめに:剪定はなぜ必要?庭木と仲良く付き合う第一歩
  2. 剪定の主役たち!基本の用具を徹底解説
    1. 剪定ばさみ:すべての基本となる相棒
      1. 切り刃と受け刃タイプ(バイパスタイプ)
      2. アンビルタイプ
      3. 大きさや重さの考え方
    2. 植木ばさみ(木ばさみ):繊細な作業のスペシャリスト
    3. 刈込ばさみ:広い面をスピーディーに整える
    4. 高枝切りばさみ:高所の作業もおまかせ
    5. 剪定のこぎり:太い枝のパワフルな味方
    6. その他の便利な用具
  3. 後悔しない!自分に合った剪定用具の選び方
    1. step1:何を切る?対象となる木や枝で考えよう
      1. 切る枝の太さはどれくらい?
      2. 庭木の種類は?
    2. step2:誰が使う?使い手の体力や経験を考慮しよう
      1. 手の大きさ、握力
      2. 体力、身長
    3. step3:材質にも注目!切れ味と耐久性の秘密
      1. 刃の材質
      2. 柄(ハンドル)の材質
    4. step4:安全性を第一に考えよう
  4. これであなたも剪定マスター!用具別・正しい使い方講座
    1. 剪定の基本姿勢と注意点
    2. 【用具別】使い方のコツ
      1. 剪定ばさみ・植木ばさみの使い方
      2. 刈込ばさみの使い方
      3. 高枝切りばさみの使い方
      4. 剪定のこぎりの使い方
  5. 大切な道具と長く付き合うために。お手入れ&保管術
    1. 基本のお手入れステップ
    2. 切れ味が落ちてきたら?刃の研ぎ方入門
      1. 研ぎに必要な道具
      2. 基本的な研ぎ方(剪定ばさみの場合)
    3. 正しい保管方法でサビを防ぐ
  6. 安全第一!剪定作業で絶対に守るべきこと
    1. 服装と保護具の重要性
    2. 作業環境の確認
    3. 脚立・はしごの安全な使い方
  7. まとめ:自分に合った道具で、もっと楽しい庭づくりを

剪定の主役たち!基本の用具を徹底解説

剪定と一口に言っても、切る枝の太さや場所、目的によって使う道具は変わってきます。ここでは、庭木のお手入れに登場する代表的な剪定用具たちを、それぞれの特徴や得意な作業とあわせてご紹介します。「こんなに種類があるんだ!」と驚くかもしれませんが、それぞれの役割を知ることで、作業がぐっと効率的になりますよ。

剪定ばさみ:すべての基本となる相棒

庭作業をするなら、まず最初に手に入れたいのがこの剪定ばさみ。細い枝から、ちょっと頑張れば親指くらいの太さの枝まで切ることができる、まさに剪定の基本となる道具です。片手で扱える手軽さが魅力で、庭木の小〜中規模な剪定作業のほとんどをこなせます。剪定ばさみには、主に2つのタイプがあります。

切り刃と受け刃タイプ(バイパスタイプ)

よく切れる薄い「切り刃」と、それを支える厚い「受け刃」がすれ違うことで枝を切る、ハサミのような構造をしています。このタイプの一番のメリットは、切れ味がシャープで、切断面がきれいなこと。植物の細胞を潰しにくいので、木への負担が少なく、特に生木を剪定するのに向いています。園芸用のハサミとして最も一般的なのがこのタイプです。庭木の健康を考えるなら、まずはこちらのタイプを検討するのが良いでしょう。

アンビルタイプ

こちらは、まな板の上で包丁を使うようなイメージの構造です。薄い「切り刃」が、平らな「受け刃(アンビル)」に向かってまっすぐ下りてきて、枝を押し切ります。バイパスタイプに比べて小さな力で硬いものを切れるのが特徴で、枯れ枝や硬い枝の処理に力を発揮します。ただし、構造上、枝を少し押し潰すような形になるため、デリケートな生木の剪定にはあまり向きません。力の弱い方でも扱いやすいというメリットがあります。

大きさや重さの考え方

剪定ばさみは、自分の手の大きさにフィットするものを選ぶことがとても大切です。大きすぎると持て余してしまい、無駄な力が必要になったり、細かい作業がしにくくなったりします。逆に小さすぎると、握ったときに力が入りにくく、すぐに手が疲れてしまいます。可能であれば、実際に握ってみて、しっくりくるサイズ感のものを選ぶのが理想です。重さも同様で、軽いものは取り回しが楽ですが、ある程度の重さがあったほうがテコの原理で楽に切れる場合もあります。自分の体力と相談して、長時間使っても疲れにくいと感じるものを選びましょう。

植木ばさみ(木ばさみ):繊細な作業のスペシャリスト

剪定ばさみよりも刃が長く、スリムな形状をしているのが植木ばさみです。その見た目の通り、細かい作業を得意としています。主な用途は、松の芽摘み(みどり摘み)や揉み上げ、玉仕立てのツゲやサツキの形を整えるような、繊細な剪定作業です。刃が長くて細いので、混み合った枝葉の中にスッと刃先を入れ、狙った一本だけを的確に切ることができます。また、生垣や植え込みの表面を軽く整えるような刈り込み作業にも使えます。太い枝を切るのには向きませんが、仕上げの作業には欠かせない、まさに職人さんのような道具です。日本の伝統的な庭園でよく見かける、あの美しい仕立ては、この植木ばさみがあってこそなのです。

刈込ばさみ:広い面をスピーディーに整える

長い刃と長いハンドル(柄)が特徴で、両手で持って使うのが刈込ばさみです。生垣や植え込みなど、広い面積を効率よく均一に刈り揃える作業に絶大な威力を発揮します。一度にたくさんの枝葉を刈ることができるので、作業時間が大幅に短縮できます。ハンドルの長さも様々で、長いものほど遠くまで届きますが、その分重くなり、取り回しにはコツが必要になります。刃の形状にも種類があり、一般的な「両刃」のほかに、より硬い枝にも対応できる「片刃」などがあります。生垣の形をビシッと直線に整えたい、丸いトピアリーをきれいに仕上げたい、そんなときには刈込ばさみが大活躍します。

高枝切りばさみ:高所の作業もおまかせ

その名の通り、脚立を使っても届かないような高い場所の枝を切るための道具です。伸縮する長いポール(竿)の先端にハサミやノコギリがついていて、手元のハンドルやロープで操作します。これがあれば、わざわざ危険な高所に登らなくても、安全に作業ができます。ハサミ部分は、剪定ばさみと同じように細い枝を切るためのもので、製品によってはノコギリが付属しており、付け替えることで太い枝にも対応できます。操作方法には、ロープを引いて切るタイプや、手元のグリップを握って操作するタイプなどがあります。選ぶ際は、最大でどれくらいの高さまで伸ばす必要があるか、そしてその長さにしたときの重さや操作性を考えることが重要です。長くなるほど重くなり、操作も難しくなる傾向があります。

剪定のこぎり:太い枝のパワフルな味方

剪定ばさみでは歯が立たない、太い枝や幹を切るときに登場するのが剪定のこぎりです。大工道具ののこぎりとは少し違い、生木が切りやすいように工夫されています。例えば、「アサリ」と呼ばれる、刃が左右交互に少しだけ外側に開いている構造により、切り口の幅が刃の厚みより広くなり、摩擦が少なくてスムーズに切ることができます。また、刃の目の粗さ(ピッチ)も様々で、目が粗いものはザクザクと早く切れますが切り口は荒くなり、目が細かいものは時間はかかりますが切り口がきれいになります。持ち運びや収納に便利な折りたたみ式や、腰に下げておける鞘(さや)付きのタイプが主流です。庭に大きめの木があるご家庭では、一本持っておくと非常に重宝します。

その他の便利な用具

主役級の道具たちに加えて、これらがあると作業がもっと安全・快適になる、縁の下の力持ち的な用具もご紹介します。

  • 脚立・はしご:高所の作業には必須です。必ず安定した平らな場所に設置し、無理な体勢での作業は避けましょう。
  • 保護具(手袋・保護メガネ):剪定作業中のケガ防止の基本です。手袋は、枝による擦り傷やトゲから手を守り、滑り止め効果で道具をしっかり保持できます。保護メガネは、切った枝葉が目に飛び込んでくるのを防ぎます。
  • 清掃用具(熊手・ちりとり・ブロワー):剪定で出た大量の枝葉を片付けるのも一苦労。熊手やちりとりはもちろん、電動のブロワー(送風機)があると、あっという間にきれいにできて便利です。
  • 癒合剤(ゆごうざい):人間でいうところの「絆創膏」のようなものです。太い枝を切った後の切り口に塗ることで、乾燥や雨水の侵入を防ぎ、病原菌が入り込むのを防ぐ役割があります。木の健康を思うなら、ぜひ用意しておきたいアイテムです。

後悔しない!自分に合った剪定用具の選び方

たくさんの種類がある剪定用具の中から、自分にとって最適な一本を見つけるのは、なかなか難しいものですよね。ここでは、お店で迷ってしまわないように、「どんな基準で選べば良いのか」という選び方のステップを具体的に解説します。このステップに沿って考えれば、きっとあなたの庭仕事にぴったりの相棒が見つかるはずです。

step1:何を切る?対象となる木や枝で考えよう

まずは、あなたがどんなものを切りたいのかを具体的にイメージしてみましょう。それが道具選びの最も重要な出発点になります。

切る枝の太さはどれくらい?

これが一番分かりやすい基準です。大まかな目安として、以下のように考えてみてください。

  • 小指ほどの太さまでの細い枝、草花:植木ばさみ、草花用のハサミ
  • 親指ほどの太さまでの枝:剪定ばさみ
  • 腕くらいの太さの枝:剪定のこぎり
  • 生垣や植え込みの広い面:刈込ばさみ
  • 自分の背より高い場所の枝:高枝切りばさみ

「大は小を兼ねる」と考えがちですが、例えば太い枝も切れるノコギリで細い枝を切ろうとすると、かえって作業がしにくく、切り口も荒れてしまいます。それぞれの道具には得意な太さがあることを覚えておきましょう。

庭木の種類は?

庭木の種類によっても、適した道具は変わってきます。例えば、松やツゲ、サツキといった、繊細な形作りが求められる木のお手入れがメインなら、植木ばさみが活躍します。一方、バラや果樹など、定期的に少し太めの枝を切り詰める(強剪定)必要がある木には、切れ味の良い剪定ばさみや、時には剪定のこぎりが必要になります。ウバメガシやレッドロビンのような生垣があれば、刈込ばさみは必須アイテムと言えるでしょう。

step2:誰が使う?使い手の体力や経験を考慮しよう

次に考えるべきは、道具を使う「あなた自身」のことです。どんなに性能の良い道具でも、使い手にとって負担が大きければ宝の持ち腐れになってしまいます。

手の大きさ、握力

特に剪定ばさみのような片手で使う道具は、自分の手にしっかりフィットするかが非常に重要です。グリップが大きすぎると握りにくく、すぐに疲れてしまいます。女性や手の小さい方は、少し小ぶりなサイズのものや、女性向けに設計されたモデルを探してみるのも一つの手です。また、握力に自信がない方は、軽い力で切れるラチェット機能付きの剪定ばさみや、前述したアンビルタイプのハサミを検討してみるのも良いでしょう。

体力、身長

刈込ばさみや高枝切りばさみのような両手で使う長い道具は、重さと長さのバランスがポイントになります。軽いものは取り回しが楽で疲れにくいですが、耐久性や一度に切れるパワーの面では、ある程度の重さがあるものに分がある場合も。高枝切りばさみは、伸ばしたときに自分が安定して支えられる重さかどうかをよく考える必要があります。身長が低い方が長すぎる道具を使うと、かえって扱いにくくなることもあります。自分の体力や体格に見合った、無理なく扱えるものを選びましょう。

step3:材質にも注目!切れ味と耐久性の秘密

道具の性能を左右する「材質」。少し専門的な話になりますが、知っておくと選ぶときの視野が広がります。特に重要なのが「刃」と「柄(ハンドル)」の材質です。

刃の材質

切れ味と耐久性に直結する部分です。主な材質には以下のようなものがあります。

材質の種類 特徴
炭素鋼(ハガネ) 非常に硬く、鋭い切れ味が長持ちします。プロの職人さんが好んで使うのもこのタイプ。ただし、水分に弱くサビやすいので、使用後のお手入れが欠かせません。
ステンレス鋼 サビに強いのが最大の特徴。お手入れが比較的簡単なため、初心者の方や、それほど頻繁に使わない方に向いています。一般的に、炭素鋼に比べると切れ味の鋭さや持続性はやや劣ると言われますが、最近では高品質なものも増えています。
フッ素コーティング 刃の表面にフッ素樹脂をコーティングしたもの。ヤニやシブが付きにくく、汚れが落ちやすいのがメリットです。滑りが良くなるため、切れ味もスムーズに感じられます。

柄(ハンドル)の材質

握り心地や重さ、耐久性に関わります。

  • 木製:手に馴染みやすく、温かみがあるのが特徴です。汗をかいても滑りにくいという利点もあります。
  • アルミニウム合金:軽くて丈夫なのが魅力。刈込ばさみや高枝切りばさみのポールによく使われています。
  • 樹脂(プラスチック):軽量で、様々な形に成形しやすいため、人間工学に基づいた握りやすいデザインのものが多いです。比較的安価な製品にもよく使われています。

step4:安全性を第一に考えよう

最後に、そして最も大切なのが安全性のチェックです。剪定用具は鋭い刃物ですから、安全に使える工夫がされているかは必ず確認しましょう。

剪定ばさみであれば、使わないときに刃を閉じて固定できるストッパーが付いているかは必ずチェックしてください。持ち運びや保管時の思わぬ事故を防ぎます。グリップの素材や形状が、滑りにくく、しっかりと握れるものであることも重要です。

高枝切りばさみや脚立は、高所での作業に使うため、特に安全性が求められます。製品が安全基準を満たしているかを示すマーク(例えば日本のSGマークなど)があるかどうかも、一つの判断基準になります。説明書をよく読み、耐荷重や正しい使い方を理解してから使用することが大前提です。

これであなたも剪定マスター!用具別・正しい使い方講座

自分に合った道具を手に入れたら、いよいよ実践です。ここでは、それぞれの剪定用具の基本的な使い方と、木を傷めず、自分もケガをしないためのコツを解説します。正しい使い方をマスターすれば、作業効率が上がるだけでなく、剪定がもっと楽しく、奥深いものに感じられるはずですよ。

剪定の基本姿勢と注意点

どんな道具を使うにしても、まずは共通する基本を押さえておくことが大切です。安全で美しい仕上がりのために、以下の点を心掛けましょう。

  • 安定した足場を確保する:地面が濡れていたり、傾斜があったりする場所での作業は危険です。両足をしっかりと肩幅程度に開いて、安定した姿勢を保ちましょう。脚立を使う場合も、平らで固い地面に設置することが鉄則です。
  • 無理のない体勢で:腕を伸ばしきったり、背伸びをしたりするような無理な体勢で枝を切ろうとすると、体に負担がかかるだけでなく、滑ったり転んだりする原因になります。切りたい枝に楽に手が届く位置まで移動するか、適切な長さの道具を使いましょう。
  • 枝のどこを切るかを知る:枝を切るときは、基本的に枝の付け根で切ります。中途半端な位置で切ると、そこから不自然な枝(徒長枝:とちょうし)が伸びて樹形を乱したり、切り口が枯れ込んで見栄えが悪くなったりします。枝の付け根にある、少し膨らんだ部分(ブランチカラー)をわずかに残して切るのが理想的です。
  • 切り口の向きを意識する:切り口は、水が溜まらないように、わずかに斜めになるように切るのが基本です。また、芽がある枝を切る場合は、残したい芽の5mm〜1cmほど上で、芽の向きと平行になるように斜めに切ります。こうすることで、芽がスムーズに成長しやすくなります。

【用具別】使い方のコツ

それでは、道具ごとの具体的な使い方を見ていきましょう。

剪定ばさみ・植木ばさみの使い方

片手で使うハサミ類は、正しい持ち方と刃の当て方がポイントです。

正しい握り方:剪定ばさみを持つときは、人差し指をグリップの外に出してハサミの付け根あたりに添えると、ハサミが安定し、開閉のコントロールがしやすくなります。

刃の当て方:バイパスタイプの剪定ばさみには、薄い「切り刃」と厚い「受け刃」があります。切断する枝に対して、切り刃が残す側(幹側)に来るように当てましょう。こうすることで、残す方の枝の切断面がきれいになり、木へのダメージを最小限に抑えられます。逆にしてしまうと、残す側の枝の樹皮がめくれたり、潰れたりしやすくなります。

力任せに切らない:少し硬い枝を切るとき、力任せに握り込むのはNGです。ハサミを少しひねるように、あるいは枝を軽く揺らすようにすると、少ない力でスッと切れることがあります。それでも切れない場合は、無理せず剪定のこぎりに切り替えましょう。

刈込ばさみの使い方

広い面を刈り込むときは、体全体を使うのがコツです。

水平・垂直を意識して:生垣の天面(上面)を刈るときは、腕の力だけで振るのではなく、腰を落として膝の屈伸を使い、体を水平に移動させながら刈ると、高さが揃いやすくなります。側面を刈るときも同様に、体全体を使って、ハサミを地面と垂直に保つことを意識しましょう。遠くから時々眺めて、全体のバランスを確認しながら進めるのがきれいに仕上げるコツです。

刃先だけでなく全体を使う:刃の先端だけでチョキチョキ切るのではなく、刃の根元から先端まで、刃全体を有効に使って刈り込むと効率的です。

高枝切りばさみの使い方

安全第一で、慎重な操作が求められます。

切る枝をしっかり狙う:ポールが長くなると、先端のハサミをコントロールするのが難しくなります。まずは短いままで操作に慣れ、徐々に伸ばしていくのが良いでしょう。切る枝を刃でしっかりと挟んだことを確認してから、ハンドルやロープを操作します。

切った枝の落下に注意:高枝切りばさみで切った枝は、真下に落ちてくるとは限りません。他の枝に引っかかって、予期せぬ方向へ落ちてくることもあります。常に頭上を意識し、自分の真上の枝は切らないようにしましょう。周囲に人がいないか、壊れ物がないかもしっかり確認してください。キャッチ機能付きの製品は、切った枝をそのまま掴んで降ろせるので便利です。

剪定のこぎりの使い方

太い枝との力勝負には、正しい知識が不可欠です。

引き切りが基本:日本ののこぎりの多くは、引くときに切れる「引き刃」になっています。押すときは力を抜き、引くときに体重を乗せるようにして、リズミカルに動かしましょう。無理に押し込むと刃が挟まって動かなくなったり、曲がってしまったりします。

切り始めの角度:いきなり真上から刃を入れるのではなく、最初は枝の下側から少し切り込みを入れるか、切りやすい角度から浅く溝(ガイド)を作ると、刃が安定してその後の作業がスムーズになります。

太い枝を切る際の工夫(三段階切断法):重量のある太い枝をいきなり付け根から切ろうとすると、途中で枝の重みで裂けてしまい、幹の皮まで大きくめくれてしまう危険があります。これを防ぐために、以下の手順で切るのが安全でおすすめです。

  1. まず、切り落としたい枝の付け根から20〜30cmほど離れた場所の下側から、枝の直径の1/3程度の深さまで切り込みを入れます(受け口)。
  2. 次に、その切り込みの少し外側(先端側)の上から、枝を完全に切り落とします(追い口)。これで、重い部分が安全に除去できます。
  3. 最後に、残った付け根部分を、本来切りたかった位置(ブランチカラーの少し外側)で丁寧に切り落とします。

このひと手間で、木の幹をきれいに保つことができます。

大切な道具と長く付き合うために。お手入れ&保管術

良い道具は、きちんとお手入れをすれば何年も、時には何十年も使うことができます。剪定用具も例外ではありません。作業が終わった後、ほんの少し手間をかけるだけで、切れ味を保ち、サビを防ぎ、次の作業を気持ちよく始めることができます。ここでは、誰でもできる基本的なお手入れと、正しい保管方法をご紹介します。

基本のお手入れステップ

剪定作業が終わったら、その日のうちに以下のステップでお手入れをする習慣をつけましょう。特に、雨の日や朝露で木が濡れているときに作業した場合は必須です。

  1. STEP1:泥や土などの大まかな汚れを落とす

    まずは、刃や柄についた泥、土、葉っぱなどの大きな汚れを、ブラシや硬く絞った布で拭き取ります。水洗いしても構いませんが、その場合は次の工程でしっかりと水分を拭き取ることが重要です。

  2. STEP2:厄介な「ヤニ(樹液)」を落とす

    剪定ばさみを使っていると、刃にベタベタとした茶色い汚れが付着します。これが植物の樹液である「ヤニ」です。ヤニが付いたままだと、刃の滑りが悪くなって切れ味が落ちるだけでなく、サビの原因にもなります。ヤニは水だけではなかなか落ちないので、専用のヤニ取りクリーナー(刃物クリーナー)を使うのが最も効果的です。クリーナーを吹き付けて数分置き、布で拭き取れば、驚くほどきれいになります。もし専用クリーナーが手元になければ、消毒用エタノールや、家庭にある無水エタノールでも代用できる場合があります。

  3. STEP3:水分を完全に拭き取る

    洗浄後は、乾いたきれいな布で、刃の隅々や可動部まで、水分を完全に拭き取ってください。少しでも水分が残っていると、そこからサビが発生してしまいます。特に刃が重なり合う部分やネジの周りは念入りに拭きましょう。

  4. STEP4:刃物油を塗る

    最後に、サビ止めと潤滑のために刃物専用の油(椿油やミシン油でも可)を塗布します。油を少量布に取り、刃の表裏、特に刃と刃がこすれあう部分に薄く塗り広げます。可動部であるネジの部分にも一滴垂らしておくと、動きがスムーズになります。塗りすぎるとホコリが付着しやすくなるので、あくまで薄くコーティングするイメージで十分です。

切れ味が落ちてきたら?刃の研ぎ方入門

どんなに良いハサミでも、使っているうちに切れ味はだんだんと落ちてきます。「枝がスパッと切れずに、潰れるようになってきた」「切るのに余計な力が必要になった」と感じたら、それは刃を研ぐタイミングかもしれません。自分で研ぐのは少しハードルが高いと感じるかもしれませんが、基本的な方法を知っておくと、道具への愛着も一層深まります。

研ぎに必要な道具

ハサミやのこぎりを研ぐには、専用の砥石(といし)が必要です。剪定ばさみ用には、持ち運びやすく細かい部分も研ぎやすい、小型の専用シャープナーやダイヤモンドヤスリが便利です。本格的に研ぐ場合は、平らな「荒砥石(あらといし)」「中砥石(なかといし)」「仕上げ砥石(しあげといし)」などを使いますが、家庭でのお手入れなら、中砥石にあたる番手(#1000程度)が一つあると重宝します。

基本的な研ぎ方(剪定ばさみの場合)

注意:刃物ですので、必ず手袋を着用し、ケガには十分注意してください。

剪定ばさみの場合、研ぐのは基本的に薄い「切り刃」の、外側の斜めになっている部分(切刃・きりは)だけです。裏側や、厚い「受け刃」は研がないでください。切れ味のバランスが崩れてしまいます。

砥石を水に浸して準備し、安定した場所に置きます。ハサミの切り刃の、元々ついている刃の角度(これが一番大事です)を崩さないように、その角度を保ったまま砥石に当てます。そして、刃先から根元まで、一定の角度を保ったまま、スーッ、スーッと数回研ぎます。研ぎ終わると、刃の裏側に金属のめくれ(「かえり」や「バリ」と呼ばれます)が少し出ます。このかえりを、砥石の角などで軽く1〜2回こすって取り除けば完了です。

もし自信がない場合や、高級な道具の場合は、無理せず専門の研ぎ屋さんや、購入した金物店などに依頼するのが賢明です。プロに任せれば、新品同様の切れ味が蘇ります。

正しい保管方法でサビを防ぐ

お手入れが終わった道具は、適切な場所に保管しましょう。最大の敵は「湿気」です。屋外の物置にそのまま放置したり、濡れたままケースに入れたりするのは厳禁です。

理想的な保管場所は、風通しが良く、湿気の少ない屋内です。購入時に付属していたケースや、革製のハサミケースなどに入れておくと、刃を保護し、ホコリからも守れます。長期間使わない場合は、少し念入りに油を塗っておくと、よりサビ防止に効果的です。次に使うとき、ピカピカの道具を手に取れると、庭仕事のやる気もアップしますよ。

安全第一!剪定作業で絶対に守るべきこと

楽しい庭仕事も、ケガをしてしまっては台無しです。剪定作業には、刃物を扱うこと、不安定な場所で作業することなど、様々な危険が潜んでいます。ここでは、自分自身を守り、安全に作業を終えるために、絶対に守ってほしい注意点をまとめました。「これくらい大丈夫だろう」という油断が、大きな事故につながることもあります。必ず以下のことを確認してから、作業を始めるようにしてください。

服装と保護具の重要性

「ちょっと庭に出るだけだから」と軽装で作業を始めるのは非常に危険です。適切な服装と保護具は、あなたを守る鎧になります。

  • 長袖・長ズボンを着用する:枝による擦り傷や切り傷、虫刺されから肌を守るための基本です。生地は、なるべく丈夫でしっかりしたものを選びましょう。
  • 滑りにくい靴を履く:足元が不安定だと、転倒の危険性が高まります。サンダルやクロックスなどは絶対に避け、底に滑り止めのついた運動靴や作業靴、長靴などを履きましょう。
  • 手袋(グローブ)は必須:手を保護する最も重要なアイテムです。トゲのある植物から手を守るだけでなく、汗による道具の滑りを防ぎ、グリップ力を高めてくれます。手のひら側がゴムや革で補強されている、園芸用のグローブがおすすめです。
  • 保護メガネをかける:切った枝の先端が目に当たったり、木くずや土ボコリが目に入ったりするのを防ぎます。普段メガネをかけている方も、その上から装着できるタイプの保護メガネがあります。特に、頭上の作業をする際には必ず着用しましょう。

作業環境の確認

作業を始める前に、自分の周りの環境をしっかりと確認することも、安全対策の重要な一部です。

  • 足場は安全か:作業する場所の地面は平坦ですか?濡れていたり、落ち葉で滑りやすくなっていたりしませんか?まずは足元の安全を確保することが第一です。
  • 周囲に人や物はないか:作業に夢中になっていると、周りへの注意が散漫になりがちです。近くにお子さんやペットがいないか、車や窓ガラスなど壊れやすいものがないか、作業前に必ず確認しましょう。切った枝を置くスペースもあらかじめ確保しておくと、作業スペースが散らからず安全です。
  • 頭上に電線はないか:これは特に注意が必要なポイントです。高枝切りばさみや脚立が、電線(電力線や電話線)に接触すると、感電という命に関わる重大な事故につながります。木の近くに電線がある場合は、絶対に無理をせず、電力会社や専門の造園業者に相談してください。
  • 天候は適切か:風が強い日は、切った枝が思わぬ方向に飛ばされたり、脚立が不安定になったりして非常に危険です。雨や雪の日は、道具も足元も滑りやすくなります。悪天候の日は、「中止する勇気」を持ちましょう。

脚立・はしごの安全な使い方

高所作業の必需品である脚立やはしごは、使い方を間違えると大事故につながります。以下の基本ルールを徹底してください。

  • 平らで安定した場所に設置する:デコボコした地面や、ぬかるんだ場所に設置してはいけません。四本の脚がすべて、しっかりと地面についていることを確認してください。
  • 開き止め金具を必ずロックする:脚立を開いたら、必ず開き止め金具をパチンと音がするまで確実にロックしましょう。これが不完全だと、作業中に脚立が閉じてしまい、転落の原因になります。
  • 天板には乗らない、立たない:脚立の一番上の平らな部分(天板)は、作業台であり、人が乗るためのステップではありません。ここに立つとバランスを崩しやすく非常に危険です。「天板に乗らない」は、脚立の安全利用の鉄則です。
  • 体を乗り出さない:「あと少しなのに…」と、脚立の上から手を伸ばしたり、体を乗り出したりするのは絶対にやめましょう。体の重心が脚立の外に出てしまうと、簡単にバランスを崩して転落します。面倒でも一度降りて、脚立ごと移動してください。

まとめ:自分に合った道具で、もっと楽しい庭づくりを

今回は、剪定用具の種類から、自分に合った道具の選び方、そして正しい使い方やお手入れの方法まで、幅広くご紹介してきました。たくさんの情報があって少し難しく感じたかもしれませんが、大切なポイントはとてもシンプルです。

それは、「何のために、どんなものを切りたいのか」をはっきりさせ、それに合った道具を選ぶこと。そして、その道具を正しく安全に使い、使用後には少しだけ愛情をかけてお手入れしてあげること。たったこれだけのことですが、実践するだけで、あなたの庭仕事は劇的に変わるはずです。切れ味の良いハサミで枝がスパッと切れたときの爽快感、自分の手で庭がきれいになっていく達成感は、何物にも代えがたい喜びです。

お店に行けば、たくさんの商品が並んでいて迷ってしまうかもしれません。しかし、この記事でご紹介したような「選び方の基準」というものさしを持っていれば、宣伝文句に惑わされることなく、本当に自分に必要な、長く付き合える相棒を見つけられるでしょう。

剪定は、決して難しいだけの作業ではありません。木と対話し、その成長を手助けする、クリエイティブで楽しい活動です。ぜひ、あなたにぴったりの剪定用具を見つけて、安全に、そして楽しく、お庭の木々とのコミュニケーションを楽しんでください。この記事が、その第一歩を踏み出すお手伝いができたなら、これほどうれしいことはありません。

この記事を書いた人
こだまクラフト

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